引っ越しの建築 / architecture as Moving
本展は、2023年6月に開催された名古屋造形大学地域社会圏領域教員展の一部として企画された。
合同会社辻琢磨建築企画事務所の2 つのプロジェクト、「辻堂の引っ越し / architecture is Moving in Tsujido」※1 と「Stille Post / 無言の郵便」※2 とを組み合わせた、モノの移動それ自体を建築的に表現した展示である。
本展の主なコンテンツは、弊社パンフレットでもある『辻堂の引っ越し / architecture is Moving』の書籍自体 と、断続的に工事が続く同プロジェクトの施工風景や施主インタビュー、製本風景をまとめた動画(撮影:三浦 義晃)となっている。
さらに、書籍展示のためのブックスタンド(青)と動画展示のためのスツール(赤)には、「Stille Post 無言の郵便」で使用した資材を転用し、この資材の移動課程をまとめた動画(撮影:伊丹豪)も展示した。
伊丹の動画 は本展の会場設営を捉えたものだが、その設営時に映り込んだディスプレイに映し出された仮の動画が「Stille Post 無言の郵便」の際に使用した資材の動きを追ったもので、フレームインフレームの中に異なる次元の移動履歴がこの2つのプロジェクトを結んでいる。
動きをテーマにした 2 つのプロジェクトが本展において場所と時間を共有することで、モノの移動としての建築、つまり「引っ越しの建築」を表現できればと考えた。
※1 辻堂の引っ越し / architecture is Moving in Tsujido
辻堂に住む若い夫婦のための住空間の計画。通常の請負契約ではなく、”更新設計”と呼ばれる長期的な顧問契約を交わし、断続的に住空間を改変していく試み。今回の「引っ越し」は長期に渡る契約業務の一環で、施主の引っ越しのサポートがその最初の業務となった。
2023 年 3 月に東京・新建築書店で開催された写真家・伊丹豪の個展で、日本の若手建築家を特集したスイス建築博物館での展示「Make Do with Now」のスピンオフ展示という位置付けとして開催された。弊社は会場構成 を担い、その資材には昨年 12 月に神楽坂 CAVE - AYUMI GALLERY で開催された伊丹の個展「DonQuixote」 (会場構成は dot architects)で使用された青と赤の資材を流用した。資材は設計段階ではdot architectsの拠点のある北加賀屋にあるということだったため、設営のタイミングで大阪までハイエースを走らせ、伊丹にも同行してもらい、大阪から東京までの資材の移動をカメラに収めてもらった。
辻琢磨(合同会社辻琢磨建築企画事務所)